最近はネットでも新車値引きの交渉術が公開されていますが、全て鵜呑みにするのは危険です。
本記事は、現役ディーラーマンの私が「値引きしたくなる客」の特徴をご紹介します。
その後で、ネットでよく見かける交渉術が正しいか間違っているかを解説していきます。
営業マンが値引きしたくなる客の特徴6つ
私は地方のディーラーで営業マンをしているのですが、下記のいずれかに当てはまるお客様は値引きをしたくなります。
大前提ですが、私どもは決して「値引きしてやっている」などとは思っておらず、できれば安くしてあげたいと思っております。
1.コミュニケーションが取れる
1番当たり前なことなのですが、コミュニケーションがしっかり取れるお客様はなんとか力になってあげたいと思います。
ディーラーマンも人間なので、雑談に応じてくれたりこちらの話を聞いてくれるお客様は好きです。
雑談の中から提案内容を考えたりするモン
車は高い買い物なので、後悔のないようにベストな選択をして欲しいと思っておりますので、ディーラーマンの話を「無駄」と思わずにお付き合いください。
2.今後もお付き合いができそうと感じる
コミュニケーションがしっかり取れるお客様は、今後も長くお付き合いができそうと感じます。
ディーラーの収益源は、新車販売だけではなく日頃のメンテナンスも重要です。
点検や車検で弊社に預けてくれそうと思えば、自然と「値引きしたい」と思います。
また、この地域に家を買って引っ越しの予定がない人なども、今後のお付き合いに期待して値引きをします。
新車なら最低5年くらいは付き合いが期待できるモン
3.家族や友人、知人を紹介してくれる
日頃から付き合いがあるお客様は、地域柄もあるかもしれませんが家族や友人、知人をご紹介してくれます。
ディーラーマンの私たちとしては、お客様をご紹介いただけるのは非常にありがたいことです。
過去の経験上、こういうお客様は自ら値引き交渉はあまりしないのですが、日頃に感謝して私たちから値引きのご提案をさせていただいております。
まさに神様なんだモン
4.何度も購入してくれている人
親子代々で購入してくださっている方や、何度も私から購入くださっている方は値引きを頑張りたいと感じます。
お付き合いが長くなればなるほど、そのお客様が重視するポイントもわかりますので、トータルで安くなるご提案もさせていただいております。
走行距離多めだからオイル交換パックを安くするんだモン
こういうお客様は新規のお客様より交渉に時間がかからないので、コストがかからないという点でも値引きを頑張っております。
5.ローンで買ってくれる人
ディーラーは新車販売だけでなく、ローンや自動車保険を契約してもらうと利益になります。
そのためディーラーが用意するローンでご契約いただける場合は、通常よりも多く値引きをしております。
しかし私が勤めるディーラーでは、過度にローン金利を高めて利益を上げるということはしておりません。
また現金一括払いで購入できる余力のあるお客様には、無理にローンを勧めるなどということもしていません。
あくまでローン購入予定のお客様で、たまたま弊社のローンが条件に合致したお客様向けという感じです。
6.日頃メンテナンスでお付き合いいただいている
まだ弊社で車は購入いただいてない方でも、日頃からメンテナンスでお世話になっているお客様は値引きを頑張ります。
引っ越しや転勤が理由で移転されて、そのまま「近いから」という理由で弊社をご利用いただく方は結構います。
こうしたお客様が買い替えを検討されている場合、日頃の感謝と今後のお付き合いに期待して値引きをしたいと思います。
実際のお客様の事例(タップで展開します)
3年ほど前に引っ越しされてきた30代のお客様。はじめは突然の愛車のトラブルでご入庫され、そのまま弊社でメンテナンスを担当しています。そのお客様がご結婚を期に車を買い替えたいとのことだったので、弊社で即納できる車を特別価格でご提案したところ、喜んでご購入いただきました。
ここまででご紹介したお客様は、皆様穏やかで私どもの事情もよく理解してくれています。
私もノルマ達成が厳しく、車検の予約を1ヶ月早めていただくなどのお願いをすることがあります。
こうしたときにも快く応じてくださるので、私も買い替えの際は「値引きしたいなぁ」と思い営業に身が入ります。
値引きしたくない客の特徴5つ
逆に、下記の特徴に当てはまる方は「値引きをしたくない」と感じてしまいます。
値引きをしたくない客の特徴5つ
1.自分の都合だけを一方的に話す人
よくあるケースなのですが、値引きをして欲しい一心で自己アピールが激しいお客様がいます。
値引きは交渉事なので、お互いの要求を認め合うことも大切です。
ある程度の値引きに応じる代わりに、ディーラーマンもお客様にお願いすることがあります。
コーティングや点検パックだモン
最安値だけを求めると、コーティングや点検パックはいらないという意見はわかります。
しかしディーラーマンもノルマがあり、達成に協力してくれる方には「値引きをしてあげたい」と思います。
最終的に選択されないのは仕方ありませんが、”聞く耳持たず”のお客様は私どもも敬遠してしまいます。
2.察して欲しいオーラを出す人
また物事をハッキリ言わず、「値引きして欲しい」という感情をオーラとして出すお客様もいます。
そういうお客様は、大体自分の中で「合格ライン」というものを持っています。
その価格をハッキリお伝えいただければ良いのですが、希望は言わずにずっとこちらの提案を否認されます。
ディーラーマンは若い人も多いので、意地の張り合いになってしまう可能性もあります。
3.価格以外を一切見ない人
トータルの価格ではお得になるように説明しているのに、眼の前の金額だけを見て「高い!」と言う方もディーラーマンは嫌います。
ディーラーマンの話にも耳を傾け、適切なコミュニケーションが取れる方であれば「値引きをしたい」と感じます。
しかし、「高い!」と言うだけで私どもの話を一切聞いてくれないお客様は、どうしても値引きしたくないという感情が芽生えてしまいます。
4.ネットの値引き情報を鵜呑みにする人
最近はSNSやYouTubeチャンネルなどで、値引き情報を公開している人も数多くいます。
こうした”最高記録”を持ち出し、「その値段じゃなきゃ買わない!」というお客様は、どうぞ他社でお買い上げくださいと思ってしまいます。
値引きは単純に金額を下げるだけではないんだモン
値引きの背景にある事情
- 時期的要因
- 営業マンのノルマ達成状況
- 会社が設ける販売促進の予算
- お客様とのお付き合い状況
- 下取車の有無
こうした事情はディーラーや営業マン、お客様によってバラバラです。
ネットに公開されている”最高記録”は、あくまでこうした条件が全て揃った時にだけ出せるものなのです。
しかしネットでは背景情報までは公開されていないため、「到底無理な金額」というものが掲載されています。
「下取りもない、一見さん、決算期でもない」というお客様が、「下取りあり、数十年のお付き合いがある、決算期である」というお客様と同額の値引きになるはずがありません。
5.点検や車検は他社に依頼している人
前章でもご紹介しましたが、ディーラーは点検や車検でも利益を出しています。
そのため点検や車検は他社に依頼している人は、正直値引きをしてまで販売したくないと感じてしまいます。
ディーラーの点検や車検は高いからという理由で、よく激安の整備工場にメンテナンスを依頼しているお客様がいます。
こうしたお客様は点検や車検での利益は望めないため、どうしても値引きは難しいという事情があるのです。
【◯✕】ネットの値引き情報の裏側教えます
よくご質問をいただくので、ネット上で見かける「値引き交渉テクニック」が通用するかどうかをご紹介します。
ネットで公開されている値引き交渉テクニック
- 【◯】相見積もりを取る
- 【◯】決算期を狙う
- 【◯】購入の意思をハッキリ伝える
- 【◯】ディーラーオプションから値引きしてもらう
- 【✕】ネットの最安値を伝える
- 【✕】お金がないと伝える
【◯】相見積もりを取る
近隣の店舗と相見積もりを取るというのは、一定の効果が望めます。
ネットで公開されている見積書を持参されても「じゃあそっちで買ってください」と伝えるだけです。
どこに店舗があるのかもわからない”現実味のない見積書”は、お客様を取られる心配がないのでディーラーも強気です。
しかし同じエリアにあるディーラーの見積書を提示されたら、「お客様を取られるかもしれない」と感じて営業マンも焦ります。
ただし同じ系列のディーラーで見積をとっても意味がないので、必ず別資本が経営しているディーラー同士を競わせましょう。
全メーカー販売!というディーラーと競わせるといいモン
【◯】決算期を狙う
毎年3月と9月にある決算期に交渉をするのは、非常に有効な手段です。
決算期はディーラーも販売台数を伸ばすために必死なので、いつもより交渉の難易度が下がります。
ディーラーは店舗ごとに、1ヶ月で使っていい値引き用の予算というものがあります。
決算期はこの予算が増えるから店長決裁が下りやすいんだモン
【◯】購入の意思をハッキリ伝える
車に限った話ではありませんが、冷やかし客と呼ばれる人はどこへ行っても冷たくあしらわれます。
最近はネットで公開するためだけに見積もりを取るお客様も増えてきているので、購入の意思がない人には値引き額は伝えません。
本当に買うつもりで交渉しているなら「いつまでには決める」とハッキリ伝えましょう。
なるべく早めの時期を伝えたほうが効果的だモン
【◯】ディーラーオプションから値引きしてもらう
車両本体価格から値引きできない場合は、ディーラーオプションから値引きすることができます。
しかし意外と知られていないのですが、実はメーカーオプションからも値引きはできるのです。
これは実際に車を注文した時の書類なのですが、メーカーオプションから約12万円の値引きがされていることを示しています。
このときは本体価格からは5万円までしか値引きできなかったので、メーカーオプションとディーラーオプションを合わせて23万円の値引きをしました。
【✕】ネットの最安値を伝える
ネットで公開されている見積書は、あくまで”最高記録”であって全員が引き出せるものではありません。
オリンピック選手が100mを9秒で走るからといって、同じようにしろと言われても無理ですよね。
値引き額は時期的要因や日頃の付き合いの度合いなども考慮されるので、ネットの見積書を出されても金額を合わせることはありません。
ディーラーマンからしたら全く参考にならない情報なんだモン
【✕】お金がないと伝える
「お金がないから安くして欲しい」という交渉をされたら、ディーラーマンはローンや残クレをおすすめするだけです。
どうしてもお金がないという場合なら、車種を変更するかグレードを下げる提案をします。
それでも「お金がない」というのであれば、冷やかし客として処理されてしまいます。
値引き交渉というのは、あくまで「安く買いたい」というお客様の気持ちにどれだけ近づけることができるかというものです。
お金がないけどなんとかして欲しいという”ワガママ”を叶える交渉ではないので、お金がないという主張はしない方が良いでしょう。
「私は客ではない!」と言っているように聞こえるモン
安く買いたいなら下取車を活用する
車を安く買うなら、この記事でご紹介した「値引きをしたいと思わせる客」になることが重要です。
「値引きをしたくない客」にならないことも重要だモン
しかしそれでも値引きには限界があるため、少し視点を変えることも必要です。
もし車の買い替えで下取車がある場合は、その車を高く売って実質の支払額を減らしましょう。
30万円高く売ることができたら、30万円値引きしたことと同じ意味になります。
まとめ
- 交渉はお互いが同じ立場で行うものなので思いやりが必要
- 自分の都合だけのお客様は値引きしたくない
- 営業マンとコミュニケーションを取れるお客様は値引きされやすい
- ネットの値引き情報は鵜呑みにしてはいけない
- 車を安く買うなら下取車を高く売ることもおすすめ
よくある質問
値引き交渉しない客はどうなる?
全く値引きしないことはないので、数万円程度値引きした額を提示します。ただ、全く交渉されないとこちらも無理に値引く必要はないので、交渉した方が安くなることは事実です。
車の値引き交渉がめんどくさい。どうすればいい?
毎年3月と9月にある決算期に車を買いましょう。セールをやっているので、値引き交渉しなくても安く車が買えます。また値引き交渉しないで車を買うと、”いいお客さん”として今後のメンテナンスなどでサービスしてもらえる可能性はあります。しかし大半の営業マンは”カモ”として扱うので、言い値で買うのはおすすめしません。
車の値切り交渉の切り出し方は?
見積書が出てきたら、まずは「値引き」の項目を探しましょう。大体の場合、見積書には値引き額が記載されているので、「ここの額なんだけど…」と切り出せばOKです。
車の値引きをやりすぎるとどうなる?
今後の付き合いに支障が出ます。しかしディーラーも限界価格があるので、過剰に値引き交渉してくるお客様は”冷やかし客”と判断して無理に車を売ろうとはしません。
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